離婚事由の一つとして、「配偶者の生死が3年以上明らかでないとき」(民法770条1項3号)があります。
意義
生死が明らかでない=生死不明とは、生存も死亡も「証明」できないことをいいます。そのため、単なる行方不明というだけの事情では、生死不明とはいえません。生存が推定される場合には生死不明とはいえませんし、ある程度死亡の可能性もあることが必要とされます。
裁判例上、「生死不明の認定にあたっては,単に所在不明という事実だけではなく,本人の年齢,性格,健康状態,所在不明に至るいきさつ,その後の配偶者や親族の対応などが総合的に考慮される」(東京地判昭和24年2月7日判例総覧民事編3巻162頁)。との判断がなされています。
そのため、「3年以上の生死不明」を理由とする離婚をするためには、死亡しているであろうとの可能性を根拠づける事情を挙げて、生死不明との認定をしてもらうことになります。
もっとも、「3年以上の生死不明」を理由とする離婚についての裁判例は、終戦後の戦地からの未帰還者にかかわるものであり、実務上本号を直接の離婚事由とすることはまれなケースといえます。
他の離婚事由との関係
もっとも、配偶者が行方不明で有ると言うこと自体、「悪意の遺棄」(民法770条1項2号)や、「婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)という離婚事由にあたるとも考えられます。
生死不明の認定にあたっては、上記の通り、不明瞭な点が多いため、わざわざ「配偶者の生死が3年以上明らかでないとき」(民法770条1項3号)という離婚事由を主張しなくとも離婚はできるので、ますます本号事由に基づく離婚事例が少ないこととなっているものと思われます。
手続
相手方が生死不明なのですから、訴訟の前にまずは調停を申し立てるという調停前置主義(家事事件手続法257条)は適用されません。そして、離婚訴訟を提起した場合には、被告の住居所が不明であるとして、公示送達の方法により、訴状が送達されることになります。その上で、原告が離婚原因を立証することになります。その際には、被告側の親族などを証人として調べるなど、原告の主張のみによらずに、離婚原因事実の確認が必要となります。
その他、失踪宣告(民法30条)という手続を使うことで、離婚ではなく、婚姻を解消させる方法があります。配偶者の生死不明が7年以上継続している場合、特別な危難に遭遇した後1年間生死が不明である場合は、その配偶者につき失跡宣告の申立てをすることができます)。失跡宣告を受けた配偶者は、死亡したものとみなされますから、これによって婚姻は解消することになります。
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