

離婚事件においては、収入が高い夫と専業主婦ないし扶養の範囲内でパート労働をしている妻との間での離婚が思い浮かびますが、ライフスタイルや価値観の変化により、夫が専業主夫で妻の方がハイスペックというケースが増えています。
結論

離婚事件において、大きく分けると、①親権者をどちらとするか、②養育費の内容、③面会交流、④慰謝料の有無、⑤財産分与の内容、⑥年金分割、といった論点があります。これらは、夫・妻、どちらの所得が高くても、同様に考えれば良いのです。
以下、夫よりも妻の方が所得が高く、子の親権者を妻とする条件で離婚するケースについて検討していきます。なお説明の便宜上、面会交流・慰謝料については触れません。
養育費
養育費とは

養育費は、離婚後、子が経済的社会的に自立するまでの間、その衣食住や教育・医療等のために必要となる費用です。民法上は「子の監護に要する費用の分担」という言葉で表現されており(民法766条1項)、父母の間で、監護親に対して金銭を負担する必要があります。
養育費の金額
離婚協議の中で夫婦が納得して離婚後の子の養育費の金額を定めるのであればその金額に特段の制限はありませんが、話し合いがまとまらないという場合には家庭裁判所で養育費の金額を決める必要が出てきます。
実務上、家庭裁判所においては、夫婦双方の収入や子の人数・年齢に応じて養育費の金額を一律に算定する算定表という資料を用いて離婚後の子の養育費を決めています。そのため、家庭裁判所が用いる算定表により計算された養育費の金額が養育費の相場であると言えます。
算定表とは?

算定表とは?
裁判所が、簡易迅速性、予測可能性、公正性を確保する養育費の算定方法として公表している資料が養育費の算定表です。
現在、公表されている算定表は令和元年12月に改訂されたもので従前のものと比較する形で新算定表と呼ばれています。算定表は以下の裁判所のホームページにPDFデータの形で掲載されていますので、インターネット環境があればいつでも確認することができます。
https://www.courts.go.jp/tokyo-f/saiban/tetuzuki/youikuhi_santei_hyou/index.html
配偶者の年収が600万円の場合の養育費の相場

算定表に基づきいくつかのケースで具体的な養育費の金額を計算してみます。
夫の収入を300万円、妻の収入を600万円として、どちらが親権者になるか×子どもが何人いるか(一人か二人とする)の場合分けをして養育費の金額をシミュレートしていきます。
妻が親権者になる場合
子が1人の場合(15歳未満)
夫は妻に対し、月額1万3600円支払う。
子が1人の場合(15歳以上)
夫は妻に対し、月額1万6300円支払う。
子が2人の場合(いずれも15歳未満)
夫は妻に対し、月額1万9700円支払う。
子が2人の場合(1人が15歳以上、1人が15歳未満)
夫は妻に対し、月額2万1200円支払う。
子が2人の場合(いずれも15歳以上)
夫は妻に対し、月額2万2400円支払う。
夫が親権者になる場合
子が1人の場合(15歳未満)
妻は夫に対し、月額5万1900円支払う。
子が1人の場合(15歳以上)
妻は夫に対し、月額6万2300円支払う。
子が2人の場合(いずれも15歳未満)
妻は夫に対し、月額7万5000円支払う。
子が2人の場合(1人が15歳以上、1人が15歳未満)
妻は夫に対し、月額8万0700円支払う。
子が2人の場合(いずれも15歳以上)
妻は夫に対し、月額8万5400円支払う。
財産分与

財産分与基準日(一般的には別居日)時点における二人の財産を合計して、多く持っている方から少なく持っている方に対し、均等になるように分与します。財産分与に男女は関係ありません。
注意したいのは、退職金です。財産分与基準日時点において自己都合退職したとしたらいくら退職金がもらえたか、という数字を出して、概念上の財産として財産計上します。これは、退職金が給与の後払的性質を有し、いわば会社内積立金のようなイメージであるから財産分与対象となるのだ、と考えれば分かりやすいかと思います。なお、結婚前から働いている場合、様々な計算方法がありますが、結婚前に積み上げてきた退職金相当額は除外します。
年金分割

日本の年金制度は大きく言って2段になっています。1階は国民年金で、皆変わりません。2階が厚生年金(共済年金)で、収入の多寡に応じて支払い金額が変わります。
将来的に、どれくらいの金額の年金保険料を納めてきたかという実績に応じて、もらえる年金が変わってきます。この、「結婚期間中に収めてきた実績」を二人分足して半分に分けるイメージになります。将来もらえる年金が半分になるわけではありません。
夫の勤務先が社会保険に加入しておらず、国民年金を自分で払っていたとしたら、妻の収めてきた厚生年金の実績を半分もらえることになります。
グリーンリーフ法律事務所は、設立以来30年以上の実績があり、16名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。
また、各分野について専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。まずは、一度お気軽にご相談ください。