夫婦の間に子供がいる場合、例えば、子供名義の預貯金を開設して、子供のために貯金をするということがあります。離婚する際に、こういった財産が夫婦の財産分与の対象になるかということがよく争いになりますので、どういった解決の方法があるのかについて解説いたします。
財産分与とは
そもそも財産分与とは、夫婦が離婚する場合に、その一方が婚姻中に形成した財産を清算するため、その分与を求めることを言います。第三者名義の財産であっても、その財産を形成した財産が夫婦の収入であったり、第三者に対して贈与された財産であると明確に判断できないという場合には、財産分与の対象となることがあります。
子供名義の財産
子供への贈与の意思が明確な財産があれば、それは財産分与の対象からは外れるのですが、不明確な場合、実質的に夫婦に帰属するかどうかは、その形成の趣旨・目的、管理状況等に照らして判断されます。
例えば、夫婦が子供の将来の教育費のために貯めていた預金や、保険料を払っていた学資保険の解約返戻金などは、必要があれば夫婦が預金を引き出して使うこともできたり、学資保険についても契約者貸付を受けて夫婦の生活費に使用できたりしますので、子供に対して贈与された財産とは認められない可能性があります。
他方、高額の財産を保有する世帯において、子供名義の預金を形成しているという場合に、裁判所が、子供に財産を帰属させる意思で、贈与税の課税限度額を超えない範囲で子供名義の預金を開設することは良くあるという理由で、子供名義の預金を財産分与の対象から外したという裁判例がありました。このケースは、財産分与で約1億4000万円の請求が認められていますので、相当に高額な財産を保有する世帯のケースであったと言えます。
次に、児童手当については、夫婦間で子供に帰属させる合意がなされたと認定できるケースは少ないですので、財産分与の対象になると判断されるケースが多いです。
反対に、お年玉などは、親族から子供に贈与された財産として認定がされやすく、通帳のページに「お年玉」というメモがあったりしますと、子供に贈与された財産として認定してもらえる可能性があると考えます。
また、メモを残していないとしても、お正月明けすぐの時期にまとまった入金をしていて、お年玉の入金以外の入金である可能性が少ないという事情を説明できるような場合は、子供に贈与された財産として認定してもらえる可能性があります。
他方、夫婦の給与とお年玉を併せて預金に入れていたという場合、お年玉として入金された分が、何月何日のいくらの入金分であるのかについて説明できないというような事情があったり、子供名義の預金を子供のために使用するのではなく、夫婦の生活費に使用していたなどの事情がありますと、お年玉であるために財産分与の対象からは外してほしいという主張は認められない可能性があります。
裁判例を見ますと、子供名義の預金についてお年玉等を入金していたという主張をしたものの、夫婦の不動産ローンの返済資金にも使用されたことがあったため、財産分与の対象から外すという認定がされなかったケースが存在します。
まとめ
以上の通り、子供名義の預金については財産分与の対象になる傾向のある財産と対象にならない傾向にある財産がありますが、夫婦の財産として帰属するかどうかは、最終的には財産が形成された趣旨・目的、管理状況等に照らして判断されます。
例えば、学資保険については、子供に帰属しているとは認められない傾向にある財産ですが、これも、子供が大学進学を目前に控えていたり、大学への入学が決まっているという段階においては、夫婦の間で子供の学費に充てようという話し合いが進んでいることがあり、このような場合は財産分与の対象からは外すという話し合いや判断がなされるケースもあります。
このように、子供名義の財産が、財産分与の対象になるのか否かについては、具体的な事情によるところがありますので、どのように判断をすべきかについてご不明な点がある場合には、一度弁護士にご相談を頂いた方がよろしいかと思います。
弁護士は、上記で紹介したようなケースを、裁判や調停を通じて経験していたり、裁判例を調査していたりしますので、個別の具体的な事情をふまえた上で、ご回答をすることが可能です。
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