20年以上別居していた配偶者から離婚が申し立てられたケースについて、年金分割を行わない等の条件で協議離婚が成立したケース

紛争の内容
20年以上前に配偶者が親の介護を行うということで実家に戻った、その後も家計は引き続き配偶者が管理していたが、ご相談者様が定年を迎えたことを契機に配偶者から離婚の申出がなされた、ご相談者様が配偶者に対して管理を任せていた通帳等の返却を求めるとともにその収支を確認したところ、明確な回答が得られない状況が続いているというご相談でした。

既に配偶者には代理人が就いていましたので、交渉事件の代理人として受任しました。

交渉・調停・訴訟などの経過
ご相談者様は当初、離婚についても難色を示していましたが、条件の如何によっては離婚には応じるということでご理解いただいたため、配偶者が管理をしていた家計状況の把握というところから交渉を開始しました。

配偶者が管理していた通帳の返却を受けその内容を確認したところ、多額の使途不明金の存在が判明しましたが、配偶者は必要に応じて実家の生活費や子の学費等に支出して既に残っていないとの回答を繰り返していました。

配偶者の実家での生活費を誰が負担するという話であったか等について意見が対立している状況であり、交渉では埒が明かないとも思われたのですが、包括的な離婚条件を設定することでその点の議論を回避することができないかという方向でも検討を進めていくことにしました。

本事例の結末
相当程度交渉を継続したところ、配偶者側が一定の解決金を支払い、年金分割も行わないという離婚条件で合意することができました。
離婚協議書作成後、離婚届を配偶者に送付することで離婚が成立するとともに、配偶者から解決金の支払いも行われましたので、事件終了となりました。

本事例に学ぶこと
婚姻生活を送る上で夫婦の一方が他方の収入を管理し家計のやり取りを行うというスタイルがあります。

定期的に家計の管理状況の報告がされる場合には問題になることは少ないのですが、長期間にわたりそのスタイルを継続した後、配偶者が管理していた財産の残額が僅かであるということが判明した場合には争いが生じます。

後者の場合、配偶者からは家計費として徐々に支出した結果が現在の残高であるという説明がされることが多いのですが、客観的な証拠からそれを否定し、本来残存しているはずの残高との差額分について返金を求めるということは容易ではありません。

配偶者に家計管理を任せることは夫婦のスタイルとしてあり得ることですが、管理の内訳については定期的に話し合いの機会を設けることをお勧めいたします。

弁護士 吉田 竜二