別居はするものの明確な理由なく離婚を拒否していた配偶者に対して離婚調停を申立て、一定の金銭条件の提示により調停離婚が成立したケース

紛争の内容
配偶者が一方的に子を連れて家を出た、当初は戻ってほしいと考え円満調停を申し立てたが、同居には戻らないと頑なに主張する配偶者の対応から離婚を考えるようになった、配偶者に離婚を提案したところ、戻るつもりはないが離婚するつもりもないという回答であったとのご相談でした。

同居に戻らないのであればいずれ離婚にはなるため、配偶者の真意を確認する意味も含め離婚調停に代理人として受任しました。

交渉・調停・訴訟などの経過
配偶者には代理人が就いていたため、離婚調停申立後、代理人を介して配偶者の離婚についての考えを確認しましたが、現時点で離婚するつもりはないとの回答がされるのみであったため、この状態ではいずれ離婚になること、離婚訴訟まではやりたくないこと、一定期間における婚姻費用と養育費の差額を解決金として支払うこと等を離婚調停の中で伝えていきました。

当初は離婚条件の話にはなりませんでしたが、調停期日を重ねる中で徐々に離婚条件の話にシフトしていき、その後は離婚条件の擦り合わせとなりました。

本事例の結末
夫婦共有財産はほとんど存在しなかったため、解決金の金額が主たる争点となりましたが、最終的には、離婚条件の話にシフトした段階で配偶者が提案してきた解決金の3分の2の金額を支払うことを合意し、調停離婚成立となりました。

本事例に学ぶこと
配偶者に対して離婚を申し出た際、配偶者から具体的な理由は明確ではないがとにかく離婚はしないという対応を取られることがあります。

別居が先行している場合、別居期間が長くなればいずれは離婚となりますが、そこまで実際に別居を継続して離婚をすることに代えて、離婚までに想定される別居期間中に支払う婚姻費用と養育費の差額等を解決金として支払うことを条件に離婚してくれないかという提案をすることがあります。

いわば時間を金で買うという発想ですが、離婚条件に関する考え方の一つとしては参考になります。

弁護士 吉田竜二