財産分与について強い争いがあったところ、裁判上の和解により150万円を受け取り離婚解決したケース

紛争の内容
依頼者は、妻子と別居し、離婚を求めておりました。
妻側も、離婚することには同意しており、離婚調停の中で決着をつけることになりました。

調停事件の依頼を受け、離婚調停を開始します。
夫側が家を出ていたことから、不動産については特にこだわりがなく、代償金を受け取りたいと考えておりました。

しかし、不動産評価額(残ローンあり)について話し合いが平行線を辿りました。加えて、妻側の親が相当額の頭金を支出していたため、どの程度の寄与があるかどうかも争点となりました。

また、妻側は、夫の「モラハラ」を主張し、慰謝料を求めてきました。

通常、慰謝料が発生するような事案ではないと考え、調停は決裂し、訴訟で裁判官の判断を仰ぐこととなりました。

交渉・調停・訴訟等の経過
訴訟では、慰謝料の基礎となる離婚原因や有責性の話が争点となるほか、養育費や財産分与が争点となりました。
上で述べた不動産がどの程度評価されるかにより、財産分与を受けられるかどうかが異なります。

そこで、不動産鑑定を実施することになりました。

夫側は、査定を3社出しており、鑑定は必要ないという立場でしたので、妻側が50万円前後の鑑定費用を納付し、不動産鑑定士による鑑定が行われました。
不動産鑑定により、不動産評価額の争いは落ち着きを見せました。

そこで、和解に向けた話合いが行われます。

夫側は慰謝料は一銭も支払うつもりがないという態度は変えませんでした。
裁判官も同様の見解に立ちました。

不動産については、査定を踏まえ、住宅ローンを差し引き、頭金として支払っている特有財産部分を考慮して、それでも妻側が夫側に金銭を支払って解決するのが相当と考えました。

本事例の結末
その結果、妻側が150万円を夫側に支払うこと、慰謝料は認められないこと、その他養育費など相場に従って取り決めた内容の和解に両者合意し、裁判上の和解によって無事に解決となりました。

本事例に学ぶこと
不動産評価額や寄与分は、離婚事件の財産分与の中でも争点になりやすいベスト3に入るといっても過言ではありません。

特に、住宅ローンがある場合であって、当事者の一方が自宅に住み続ける場合、オーバーローンであれば、代償金が発生しませんし、アンダーローンであれば、代償金で解決することになりますので、不動産評価額は重要です。

不動産評価については、査定等によりある程度平均的な金額で合意することが多いですが、地価高騰物件や評価が分かれる物件では、本件のように、不動産鑑定(裁判所が中立的な不動産鑑定士に鑑定を依頼すること)により、金額を定めることがあります。

もっとも、不動産鑑定には、50万円~不動産の規模等によって異なりますが、鑑定費用がかかります。そのような持出しをしても査定する価値が見いだせる場合には、利用することを検討するのも一つです。

弁護士 時田 剛志