突然、幼い子を連れて遠方の実家に帰宅した妻との離婚が成立し、柔軟な面会交流による父子関係を築いたケース

紛争の内容
妻が突然、幼い子を連れて遠方の実家に帰省し、間もなく代理人弁護士を通じて「離婚」「婚姻費用分担請求」の調停が申し立てられました。

たしかに夫婦仲は上手くいっておりませんでしたが、突然、妻子がいなくなってしまい、生活が一変することになりました。

そこで、「調停にどのように対応したらよいか分からない。」「調停委員に丸め込まれそうで怖い。」「子どもと会いたい。」という相談者の力になるため、代理人活動に従事することになりました。

交渉・調停・訴訟等の経過
調停においては、まずは婚姻費用を取り決めるため、双方の収入資料を開示し、既払金(別居した妻子が本来負担すべき費用など)を差し引いた上で、婚姻費用算定表に従って金額を取り決め、離婚調停より先に、婚姻費用分担請求調停を成立させました。

その間、粘り強く面会交流を求め、子に対する想いを伝えることに重きを置いて、調停を進めました。

最初は、親権についても争うという選択肢がありましたが、代理人弁護士と議論を重ね、様々なメリットやデメリットも考慮したうえで、親権については争わず、面会交流を充実させる方針をとることを選択されました。

調停委員(男女のペア)もご主人の子どもに対する愛情を踏まえ、面会交流の調停ではないにもかかわらず、話し合いの多くの時間を割いて、その結果、面会交流を実現することができました。

最初は、不安や子どもの心情不安定を全面に主張してきていた妻ですが、面会交流を地道に重ねた結果、面会交流の時間も伸ばすことができ、親族(ご主人の親)の交流についても柔軟に認めさせることができました。

本事例の結末
結局、親権は妻側が行うこととなり、面会交流については、夫側の意向に沿う形で実施する頻度、場所を取り決めることができました。

子はまだ小さいですが、小学校くらいになれば、宿泊付きの面会交流も目指して、コツコツと地道に面会の実績を重ね、子どもから会いたいと言ってもらえるような交流を続けることになりました。

本事例に学ぶこと
離婚に至るまでに別居が先行することが多く、子がいる場合には、いずれか一方が監護する状況になります。

子を思うがあまり、親権を全面的に争いたくなるところですが、そうすることによるデメリット、つまり監護親側が柔軟な面会交流を認めない方針をとるということも暫しあります。そうすると、夫婦間で争っている間、子は成長し、面会交流もまともに実施できないという悪循環に陥るリスクがあります。

もちろん、争わなければ親権を獲得するのは通常困難であり、覚悟して取り組むケースもあります。その場合、子の監護者指定や子の引渡し、面会交流のそれぞれの調停を提起し、全面的に対抗することも可能です。

もっとも、子どもと安定、継続的な面会交流を求める場合には、障害になることもあるのは事実です。

親権の争いにおける勝訴見込を十分検討し、どちらの方針で進むのか、納得する選択をしていただきたいと切に願います。

そのためには、じっくりと代理人とご本人とで話合い、ミライを選択することとしております。

子どもにとっての最善の利益や最善の状態を、親同士が真剣に向き合い、父親、母親というそれぞれの立場をおいて、子どもの視点にたって結論を出す、そういった観点からもアドバイスいたします。

弁護士 時田 剛志