紛争の内容
相談者は5年以上前に妻と結婚して別居したままであったところ、妻の不貞行為が発覚しました。
その後、きちんと離婚しようと一時的に同居生活を始めたところ、妻は間もなく家を出て行ってしまい行方知らずとなってしまいました。
そんな中、妻は相談者である夫を相手方とする婚姻費用分担請求調停を申し立てるに至りました。
交渉・調停・訴訟等の経過
相談者は妻の不貞行為を許すわけもなく、ほとんど同居していないため、婚姻費用の支払を拒否しました。
そのため、婚姻費用分担請求調停は不成立となり、審判移行しました。
妻は、不貞の事実を認めながらも、その後相談者である夫が不貞を許したと言って、婚姻費用分担は当然と主張しました。
もっとも、原審である家庭裁判所は、当方の反論を認め、妻による婚姻費用の請求は権利の濫用であり却下するとの判断をしました。
これに対し、妻側は様々な証拠を追加提出して高等裁判所に抗告しました。
抗告審において、妻側の提出した証拠資料に対する別の観点からの反論を行い、原審を維持するべきであるとの主張を行いました。
本事例の結末
高等裁判所は、抗告を棄却しました。
そのため、妻からの婚姻費用請求は認められず、相談者の無用な義務を免れることができました。
本事例に学ぶこと
婚姻費用分担請求をされた場合、算定表にしたがった金額を払うと、機械的に考える方がいらっしゃいます。
あるいは、「金がないから払わなくて良い」という、夫婦の生活扶助義務を無視した無理のある反論をされる方がいます。
婚姻費用を支払う必要があるのかどうか、必要がないとしてどうやって争っていけば良いのか、一般の方が対応されるのは困難なことが多いです。
本件も、依頼者の方が弁護士に相談してくださったおかげで、支払うべきではない莫大な婚姻費用の負担を免れることができました。
弁護士 平栗 丈嗣